中小企業診断士~遠隔地から何ができるか➀
第150稿です。
前回までは、資格取得までのことについて触れました。
資格を取ったはいいものの、実践で生かさないと意味ないし、そもそも知識だってすぐ古くなるので、常にアップデートしないと使い物にならないように思っていました。
日本の中小企業のために作られた資格だと思うので、制度設計もすべて日本在住の前提で作られています。
ところが、期せずしてオンライン時代到来が早まり、日本在住でなくても中小企業診断士としてできることも増えているように感じています。
具体的にオンラインでもできるようになったことは次の通りです。
(インプット)
・理論政策研修
中小企業診断士は5年更新の制度です。その期間に以下の要件を満たす必要があります。
①専門知識補充要件:理論政策更新研修受講等5回以上
②実務従事要件:診断助言業務に従事等30日以上
このうちの①について、昨年までは実際の会場に出向いて行って研修を受講する必要がありましたが、コロナ感染拡大を踏まえた時限措置として、オンライン講習も認められました。時限措置なので、またリアル開催のみ、という形になってしまうかもしれません。
海外を含めた遠隔地の人が気軽に参加し更新要件を満たせるように、引き続きオンライン開催を続けてほしいものと思います。
私の場合はいつリアル開催に一本化されるかわからないので、この数か月で5年分の講習をすべてオンラインで受講しました。
・研究会・勉強会など 理論政策講習のほかにも、中小企業診断士協会の研究家や勉強会、その他いろんな団体が開催するいろんな研修会やセミナー、イベントなどが多くオンライン化され、幸いにも多くのセミナーに動画等ではなくリアルタイムで参加することができました。
(アウトプット)
・企業診断の実務従事など
中小企業の側でもオンラインでの企業診断でもいいと言われる会社さんも増えてきたようで、遠方にいても診断実務に携わることができるようになってきました。
・取材や執筆
理論的には過去から可能だったことだと思いますが、世の中がオンライン化したことでその流れが加速したのではないかと思います。
いままでは取材をオンラインで受けるなんて、という気持ちも取材を受ける側にあったかもしれませんが、人の意識が変わったことで環境が整備されてきたような気がします。私もここにいながらにして何件か取材をする機会をいただきました。
・中小企業診断士受験生支援など
自分は受験時代は公民館を使った勉強会に参加し、中小企業診断士試験に合格した先輩たちにお世話になりましたが、今年支援側に立つときには、昨今の状況下でその活動がすべてオンライン化されました。こういう形でも受験生支援ができることを改めて実感しました。
それでもオンラインは万能ではなく、できないことは多々あると思います。
次回はそのことに触れたいと思います。
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中小企業診断士~資格取得まで②
第149稿です。
前回は資格を取ったあとのスキルアップを考えて講座に申し込んだ話をしました。
4月~5月の2ヶ月だけの集中講座でしたが、海外から会場に出向いて参加することはできないので、動画視聴で学ぶつもりでした。
ところが3密を避けなくてはいけない情勢を受けて、全面オンラインに切り替わりました。
新型コロナ感染はどんどん広がっていて、日本では4月には緊急事態宣言が出されました。
人の往来が大きく制限を受ける中で日本国内の企業も大きな打撃を受けました。
自分にとってはオンライン化は大きな機会でした。一方でそのきっかけが日本の苦境だった、というのは複雑な思いです。
そういう中で学ばせていただいたので社会に還元しなくてはいけないな、とは強く思っています。
さらには、私のいる国でも3月の初めに初の感染者が見つかり、早々と国境通過を厳格化し移動は完全にシャットアウト、ゴルフ場含むすべてのスポーツ関連施設は一時閉鎖、という状況で、数少ない娯楽も完全になくなっていましたので、そのおかげで、週末にゴルフに行くこともなく、より集中して講座に取り組むことができる環境下になった、というのも考えてみれば皮肉なことです。
(過去記事でこの国の強力なコロナ対策について触れています)
4月に開講、毎週日曜日に半日かけて講義とワークがありました。
内容はかなり密度が濃いものでした。
その道の一流の人たちが登壇しそのノウハウや経験談を伺う機会を得ました。
長時間の講義を聞くと、どこかで眠くなって途中から講義の内容が頭に入らなくなることは経験上よくあることなのですが、この講座に限って言えば一度もそんなことはありませんでした。
講座自体がよく工夫されていて常に刺激的な内容だったこともありますし、ここで学べているのは幸運、ここで学び取らなくては後がない、という鬼気迫る思いがあったからだと思います。
一方で学んでばかりいても自己満足でしかない、アウトプットしなくてはいけないとも思っていました。
アウトプットする機会を探るために、中小企業診断士協会のいろんなイベントにも参加するようにしましたし(その頃は多くのイベントがZOOM化されていました)、このブログを始めることにしたのもその頃でした。
そして、5月には中小企業診断士として登録できました。
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中小企業診断士~資格取得まで①
第148稿です。
前回までは中小企業診断士試験合格までの話をしました。
試験に合格したといってもまだ何も知らない状態。何か活動の取っ掛かりを得る必要性を感じていました。そのためのスキルアップの必要性を感じていました。
海外にいて、実際の日本の中小企業診断の現場からは離れたところにいましたので、自分で何もしなかったら何も起きないまま時だけが過ぎることを危惧していました。
口述試験で一時帰国した際に先輩診断士に相談しました。
そしたら、「取材の学校」というのがあるよ、と言う。
その方も3年ほど前に受講して非常によかった、とおっしゃっていました。
受講料かかるけどその後に案件も来るからすぐ元とれるよ、とも。
中小企業診断士としての力を磨くには「取材力」を培うのがいちばん、というのが講座の発想。
以下はこの講座を主宰されている方のコメントです。
(ホームページからの引用)
「取材」は、単に人の話を聞くだけではありません。そこには、様々なスキルが必要になってきます。
■取材先の環境および置かれている状況等を調査・分析する「診断力」
■「何を」「どのような順番で」「どのような方法で」話すかといった「話す力(質問力)」
■1時間から1時間半という短時間で、相手の本音を引き出す「聴く力」
■どのような構成で、どのような表現方法で書くかといった「書く力」
■想定しない返答や状況に対応する「現場対応力」
このように、「取材力」を磨くことで、中小企業診断士に必要とされる「診断力」「話す力(質問力)」「聴く力」「書く力」「現場対応力」といった様々なスキルを身につけることができます。
内容や効用はよくわかったのですが、海外から、ということでさすがに受講は難しいかな、と思っていました。
ところが動画視聴というやり方もある、という。
早めに受講申し込みをすればこの講座を主宰している会社の経営診断に従事をすることもできる、という。
つまり実務従事をすることもできる、ということです。
その結果として実務ポイントも取得できる、ということになります。
とにかく何かを始めたい、という思いが強く、即申し込みました。
2019年の大晦日でした。
2020年元旦には返信が来たのは驚きました。
2020年年明けすぐには主宰者へのヒアリング、グループでの経営診断準備(これはかなり回数を重ねました)、そして経営診断発表会、と講座が始まる4月までにすでにかなり密度の濃い活動が始まっていました。
グループでの打合せは常にZOOM。
ここでは来たるオンライン時代を予見するかのように、ZOOMを駆使して打合せを頻繁にやっていました。
このお陰で海外にいながらでも企業診断に立ち会うことができるのかもしれない、と思い始めました。
2月終わり頃からは新型コロナウイルス感染が日本国内で広がり始め、3密状態は避けるべし、という風潮が高まっていきました。
そして、異例中の異例だと思いますが、いままでリアル開催を続けてきた本講座は、2020年は100%オンラインに切り替わることになりました。
そして4月に開講しました。
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試験の話~中小企業診断士⑪~実務補習
第147稿です。
2019年度試験の合格発表は12月25日、クリスマスの日でした。
いまどきはインターネット上で合格発表されます。
口述試験は過去の実績では99%が合格するのでそう心配はしていなかったのですが、それでもきちんと答えられたか全く自信がなかったので不安ではありました。
中小企業診断士協会のサイトで番号があることを無事確認でき、長かった試験生活にピリオドを打ちました。
これでFP1級、中小企業診断士、とあわせて資格取ろうと思い立ってから8年経過していました。
中小企業診断士の場合、試験合格でそのまま資格取得とはならず、実務補習あるいは実務従事を経なくてはいけません。
これは、机上で学んできた知識を実際に中小企業の現場で確認し、実践する場です。
教科書や参考書の知識だけではなく、それを実践で使えるようにする、という意味でいい制度だとは思うのですが、私のように海外にいる場合は、なかなか大きなハードルでした。
中小企業診断士協会は実務補習の機会を提供しています。
そこで中小企業の診断や助言をする場があるのですが、当然すべて日本で実施されます。
そして、資格を取得するためには、全部で15日間の実務補習を受けるか、実務従事(実際の実務)を行う必要があります。
実務補習は企業で働く人のことを考慮して、すべて土日を含んだ日程で計画されています。
海外から何度も帰国して受講することも理論的には可能でしたが、お金もかかるし、そもそも本業であるこっちの仕事をそっちのけで帰国を繰り返すわけにもいかず、少し悩んでいました。
そこでたまたま見つけたのが海外での実務補習の機会。
全6日間の日程でしたが、2日間は東京で研修、4日間は東南アジアに進出している中小企業さんの現場にお伺いし実際に診断、助言をさせて頂くというもの。業務上の都合で休暇が取れるかどうかはわかりませんでしたが、とにかく申し込むことを優先しました。
Webサイトに予告は出ていたので申し込み当日までスタンバイ、申し込み開始の瞬間に申し込みました。
定員6名の枠はあっという間に満席になったように思います。
あとで聞いた話だと、新規資格取得のために受講したのは私だけ、あとの受講生の方はすべて資格更新のための受講だったようですので、実はあまり知られていなかったのかもしれません。
(中小企業診断士は5年ごとに更新が必要で、その期間で企業診断実務を30日間、及び理論政策研修という座学を5回以上受講する必要があります)
診断先はITの会社さんでした。事前に提供された資料を読み込み、他の受講生の方とその企業さんをいかによくするかについて議論をするのは非常に楽しかったし、勉強になりました。
何よりもチームで助言差し上げたときに経営者の方に喜んでいただいたのがいちばん嬉しかったですね。
東京での研修、東南アジアでの実地診断いずれもコロナ前に実施できたので滑り込みセーフでした。
コロナの余波もあり、当面はこの海外での実務補習は凍結だそうです。
休みをとれるかわからないから、と逡巡していたら機会を逃していたかもしれません。
次回以降は引き続き資格取得までの話をしようと思います。
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試験の話~中小企業診断士⑩~口述試験
第146稿です。
前回はようやく中小企業診断士の2次筆記試験にようやく合格した話をしました。
そしてその合格発表を機内で確認したときの話は以前に以下でお話ししました。
2次筆記試験を通過すると2次口述試験というものがあります。
合格率は例年99%超なので、きちんと会場に赴き、面接試験を受ければ合格すると思われます。
昨年の今ごろは私も一時帰国し受験しました。
口述試験の受験票を見て、ようやくここまで来たか、と感慨深いものがありました。
試験開始時間は10時36分、というキリのよくない時間、面接会場はある大学でした。
面接は、広い部屋に2つの面接官がいて、私は1人で対応する、という形でした。
この試験は、それに先だって行われた2次筆記試験の事例文に出てきた内容を基に質問されるというものでしたので、筆記試験に出てきた事例文の中の企業の特徴などはきちんと頭に入れておく必要がありました。
こう聞かれたらこう答える、といった準備はある程度していたつもりでしたが、さすがに面と向かって聞かれると緊張するものです。
質問は4つあったと思います。
そのうちの2つしか覚えていないのですが、次のような質問だったと思います。
C社について、X社との取引は繰り返し生産ですが、何に留意するべきですか?
D社が原価率を下げたい場合はどうすればいいですか?
それに対してどういう回答をしたのか、実は明確には記憶していないのですが、知っている知識を繋ぎ合わせて答えていたように思います。
きちんと筋道立てて答えた実感もないままあっという間に試験は終わりました。
そして翌日の朝に再度赴任地に戻りました。
その数日後に晴れて合格の通知を郵送で受け取りました。
口述試験ののちに、自分の筆記試験での得点を開示請求することができます。
結果は、事例Ⅰ 62点 事例Ⅱ 59点 事例Ⅲ 57点 事例Ⅳ 66点 計244点 でした。
合格点は240点ですので、まさにギリギリで合格した、ということになります。
長かったこの試験への取り組みはこれでやっと終了しました。
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試験の話~中小企業診断士⑨~4回目の挑戦
第145稿です。
前回は3回目の中小企業診断士試験を受けた話をしました。
さすがに海外から帰国して受験しなくてはいけなかったし、受験生のカテゴリーからすると多年度の域に突入してきたし、試験の本質も掴めていなかったしその自信もなかったので、もうやめようかなと思ったりもしました。
それを妻に話すと、「ここまでやってきたんだからもったいないんじゃない?」と言う。
その言葉で今一度チャレンジする気持ちになりました。
海外にいては参考書の入手も簡単ではなく、周囲のレベル感のわからない独学の限界も感じていたので、インターネット上で解答を添削、返却してくれる講座を見つけて活用することにしました。
4度目の2次試験の学習を進めながら気づいたこと。実は試験で毎回のように問われる論点があるということでした。
それに対して、今までは毎回時間をかけて考えて解答をひねりだしていたのですが、解答の定石のようなものをきちんと理解して自分の中に定着させていないのが問題だったと気づきました。
事例文は毎回違ったものが与えられるけれども考えるべき観点は毎回似通っていることに気づきました。
自力ではそこに気づけなかったと思います。それなりのコストはかかりましたが、少し試験の本質に近づいた気がしていました。
通信講座にはいくつかの課題があり、毎回〆切がありました。
それをペースメーカーにしながら学習を進めていました。
中小企業診断士とは企業の経営診断をするのが仕事なので、経営課題に直面したときに、瞬時にいろんな観点から課題を検討し、その企業にもっともふさわしい解を導き出す必要があります。
この2次試験はそのプロセスを紙上で試されている、という風に捉えることができるようになりました。
2次試験は、事例Ⅰ(人事・組織・戦略)事例Ⅱ(マーケティング)・事例Ⅲ(生産)・事例Ⅳ(財務会計)と4つの科目があります。
事例Ⅳだけは計算が中心となりますが、不合格時代はわかっていても点が取れないのが課題でした。
こちらも実はきちんと知識が定着していないことが問題だとわかりましたので、基本的なことが目をつぶってもできるくらい徹底的に反復してやりました。
こういう経緯を経て、この年の学習は、やるたびに力がついているような感覚がありました。
そして2019年10月。
一時帰国して臨んだ4回目の試験。
試験後はできたという手ごたえも特になかったですが、失敗したという感覚もありませんでした。
そして12月の合格発表。
やっと2次筆記試験に合格しました。
コロナウィルスが世界を席巻する直前でした。
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試験の話~中小企業診断士⑧
第144稿です。
前回は中小企業診断士試験を2度目に受けた話をしました。
1次試験の合格権利は1度だけ持ち越せる制度になっていたのですが、この不合格によって次の回は1次試験からやり直しとなりました。
そのときにはすでに海外赴任となっていました。
1次試験はある意味時間をかけて暗記すれば何とかなる部分があり、試験直前の数日間は部屋に籠って対策をしていました。
そして一時帰国し受験。
赴任地に再渡航する頃には正解が発表されていましたので移動中に自己採点しました。
その結果は、経済学 64点、財務会計 52点、企業経営理論 60点、運営管理 62点、経営法務 44点、経営情報システム 64点、中小企業経営/政策 63点 というもので、合計409点。
初年度に受けたときの自己採点は417点でしたから大幅に得点が下がったことになります。
さすがにこれは受からないと思いました。
海外からわざわざ帰国して受けたのにこの結果か。。と暗澹たる思いで帰途に就きました。
科目合格制度というのがありますので、60点を超えた科目は合格となります。
そのため、60点を超えなかった財務会計、経営法務の2科目を翌年度に受けるかなあ、この2科目の合計で6割を超えれば翌年は権利を得られるなあ、でもいずれも苦手だし危険だな、などといろんな考えが頭に渦巻いていました。
そんな思いで迎えた1か月後の合格発表。
驚いたことに合格していました。
その年の経営法務は極端に難しかったようで、一律8点の加点の得点調整が発表されていました。8点というのはこれまでにない大量加点でした。
でもそれでも合格点の420点には3点足りません。
調べてみるとある科目で自己採点が漏れているものがあり、その部分の正解をカウントしていませんでした。
そういうわけでまたもギリギリでの合格。
そして3度目の2次試験に臨みました。
すでに海外から通学等はできないため、Facebookでオンラインの勉強会一本で対策をしていました。
既に中小企業診断士試験を突破した人からFacebook上で自分の答案にアドバイスを貰う、というものでしたが、これは遠隔地にいる身としてはありがたかったです。
でもまだこの試験の何たるかを身につけるに至っていませんでした。
再度一時帰国して受けた2次試験は、いつも通り事例文に振り回されて、設問どれ一つとしてきちんと書けた解答もなく、またしても失意の念を抱いたまま再渡航の途に就きました。
結果は案の定不合格でした。。
なかなか壁を突破できず、お金も時間もかかるし、もう受けるのやめようかな、と思い始めていました。
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